今年は夏以降、毎月のように北陸新幹線に乗っている。東北新幹線とほとんど区別がついていなかったのは昨年までで、今となってはちゃんと停車駅も分かるようになった(新幹線の名前はまだ難しい)。今年最後の乗車は熊谷までの道のり。高崎で乗り換えて一駅。そこから先は秩父鉄道。ほとんど足で走ってばっかりだから、こういうローカル線にゆっくり乗れるのはとても楽しい。
旅の目的はFTR。100キロの部での出場だ。来年のLAKE BIWAに向けてモチベーションと体力とテクニックを維持向上していかなくてはならなくて、その一貫で勢いに任せて休日勤務の昼休みに勢いで申し込んだ。加賀スパ以降右足のアキレス腱炎で苦しみ標高はあまり稼げていないものの、2回のプロロテラピーで痛みはだいぶ和らぎ、北陸街道のRUN旅で体力の維持は出来ている。中能登トレジャートレイルと富士写岳4つの登山道を使ったトレーニングでたるんだ大腿筋に活も入れた。今出来ることは全部やったんじゃないか。若干体重は増えてしまった。総距離105キロ、累積標高6800メートルは数字だけ見れば加賀スパ以上。何より全く試走無しで困難なギザギザなややこしいルートに挑むことへの不安は結構大きくて、一方で制限時間はかなり緩く、要するにメンタルをガリガリ削り続けて最後まで保つかどうかのレースになりそう、ということだ。
車窓から見る富山の田園は本当に美しい。直線的に区切られた広い水田地帯に住まいが散居している。高く伸びた木が家のすぐそばに育てられているのも特徴的だ。冬が近づき朝靄の白さが先月よりも濃くなっていて、紅葉を迎えた山の木々は赤、黃、橙のグラデーションに染める。白鳥の山影は見えたものの雲がかって頂の様子は伺えない。しばらく続くトンネル区間で景色は見えないけれど、宮本常一の文庫本が旅情をさらに掻き立ててくれる(別に旅行記ではないのだが)。初めて日本で快速電車が走ったとき、高い料金を払ったのにすぐ降ろされるのは何事ぞと怒った人がいたというが、各駅停車新幹線というのは速さも旅情も味わえる最適解なのかもしれない。決して1,000円ポッチの指定席料をケチったわけではない。
高崎では空が濃い水色に切り替わり、グンマー帝国もまた関東であることを実感させられる。遠くに妙義山ののこぎり稜線が見えた。ここで北陸線から上越線に乗り換える。北陸新幹線は大宮直行で『ダサい玉』の駄駅には止まらないらしい。何様だよと思う元埼玉県民。。。そういえばMaxときって昔は2階建てじゃなかったっけ? 昔は帰省でよく使ったものだが数年前に廃止されたようだ。「Max」は「Multi Amenity Express」の略で、本来の意味を失ったわけか。ちなみに上越妙高駅に止まらない上越新幹線の『上越』は「上野〜越後」間の意味だそうでややこしい。右手には明日走る秩父の山々が見え始める。
新幹線の旅は熊谷まで。秩父鉄道は荒川に沿って延びる。この下流が昔よく走った彩湖や東京の河川敷に繋がるわけだ。熊谷駅では200円のお値打ちメダルを作ってみたり、初めて見る QRコードの切符に感動したり。電車自体はローカル線らしさ満開の穏やかな走行に対し、平日の9時だというのに沢山の乗客。車窓から差し込む日差しの暑さ。レースでは日焼けしちゃうんだろうか。駅前もだが車内は平日にもかかわらずやたら子どもが多い。学校どうした? ふと思い当たったのが埼玉県民の日。まさに今日11月14日ではないですか。大人しくディズニー行ってくれればいいのに、よりによって秩父を目指す人達で溢れているというわけか。
ずっと立ちっぱなしの恩恵で紅葉最高潮の長瀞渓谷を満喫する。広葉樹が多いということでもあるが、荒川という道があるのに林業は栄えなかったのだろうか? (手前のほうで製材所は見かけたが)滋賀の朽木に似た地形なのに、何処で違いが生まれたのだろう。明日走る道もこんな綺麗なところだといいのにと、呟くだけなら無料です。夢よ醒めるな。(実はまんざら夢でもなかった)





秩父駅からふらっと歩いて秩父神社にお参り。カラフルな装飾を楽しむ。すぐそばには本日のお宿があり、その横にあるうどん屋を楽しみにしていたものの今日は休日らしい。県民の日だからかな? せっかくなので番場通りをそぞろ歩き、このまま有名なわらじカツ丼のお店まで歩いてしまえということに。武甲山を左手に捉え1キロ少々で到着したら中々の長蛇。まだ開店前なので初回ロットに紛れないかと思ったものの、ちょうど私の前で終わってしまった。まぁ、時間を潰すつもりの図書館が意外と遠いこともあり、並んで時間を潰すか。
30分待って食べたわらじカツ丼の味は、まぁね。。。おかげで受付時間前にいい感じに到着できたからそれでいいのだ。ササッと受付を済ませたら再び番場通りを歩く。何故か踏切にカメラ小僧が沢山いて、何だろうかと思うと突然大きな汽笛が聞こえる。SLが目の前に現れた! そこかしこから人が集まってきて乗客に手を振り始める。車窓から顔を出したおっさん連中も笑顔で返す。事前に知っていたらGRで撮影したのにな。
宿泊施設に向かい、ようやく重いボストンバッグを降ろした。これから何しよう? 楽な服装に着替えて3度目の番場通り。イモンブランとか自家製お団子とか美味しそうなものは沢山目に付くけれど、若い子に混じる勇気が出ないまま結局アンパイなスーパー銭湯で時間を潰すことにした。
お風呂から出ると外はもう日が暮れていた。途中ベルクでみそポテトと深谷ねぎのメンチカツを買ってしまう。清太郎兄さんがお勧めしてるんだもの。ダイスケさんっぽい声も混じっている。そうか、ここはNack5のまさにお膝元なのだ。いつもはすぐに食べちゃうけれどここは我慢。秩父神社前に美味しそうな天重を見つけていたのだ。ウキウキしながら近づくと電気が消えている。番場通りのお店はほとんど夕方に閉まってしまうようだ。ガクッときて、再び西武秩父まで戻ってすき家で済ませた。今日は番場通りを何度歩いたことか。結局パンパンに膨れた腹を抱えて宿に戻る。










FTR 100K
細々としたトラブルはともかく、レースはまさに今年1年の集大成ともいえる内容で締めくくることが出来た。ザレ場が多いと言うものの一度も尻もちを付くことなく、スリップ自体がほぼ無かったのはFUJI以降鍛えた下りの技術の集大成。初見の飯能アルプスも冷静に処理できた。最終エイドを過ぎてから残していた足を全部出し切り、KagaSpa100kよりも早い24時間27分でのゴール達成は今の実力で考えられるベストの成績と言っていい。
とにかく黙々とピークを越えてエイド間を繋ぐレースだった。エイドの食事は本当に最高。焼きたてパンに始まりおいなり、シチュー、サンドイッチ、牛丼に御当地名物のみそポテトその他諸々。塩味ポテチも美味しい。山ほど食べてエイド出発直後は胸焼けで調子を落とし、1時間くらいして腹がこなれてからペースを上げるのを繰り返した。長念寺ではシイタケ出汁のすいとんがとても美味しくて、けれども野菜はカロリーにならぬと胃袋が後半癇癪を起こし始める。満腹状態がデフォルトだと勘違いしたらしく、ここで持参の補給食をいくつか使う羽目になった。
一・二回程度の試走では覚えきれないだろう複雑なルート。全体を通して鋸のようなプロファイルにビビりまくっていたけれど、イメージ通りだったのは二度目の子の権現から長念寺までの間だけで、それ以外はわりかし走れる道だったように思う。奏功したのはマメのできやすい足裏に貼ったハイドロコロイド絆創膏。かなり昔に買った『REGUARD』という商品を偶然自室で見つけ、試したところかなり良い。汗を吸って膨れたジェルが完璧に肌を守ってくれた。残念ながらこの商品はすでに廃番になってはいるものの、同様の絆創膏はいくつかあるので試してみよう。SIDASの交換ソールもかなり良かった。足裏さえ死ななければ筋肉はまだまだ動かせることが実感できた。
もちろん走るだけではなくて山の植生も楽しんだ。西部線沿いの長瀞、秩父の美しい広葉樹林から山を越え入間川(名栗川)沿いに出ると一気にスギ林に切り替わること。そんな林の無限根っこ地獄は貧相な堆積岩上に林が作られたためで、根っこか潜り込む土が無いからだということ。ジオパークとしての秩父が生み出した光景だと考えれば、ただ無限根っこ地獄とはまた一味違った見え方がある。
2025年のトレランシーズンはこれで終了だ。春になるまでKaracalは冬眠してもらう。来年こそはLAKE BIWAだ。そのために再びFUJIやKagaSpaの舞台にも立とう。憧れる心に道は続く。




















